2010年4月9日金曜日

h22.4.8  平成22年度入学式を行いました。本年度もよろしくお願いします。

平成22年度県立飾磨工業高等学校 入学式 式辞

 この飾磨の地にも、春がやってきました。本日、御来賓の皆様と、新入生の保護者の皆様の祝福をいただき、兵庫県立飾磨工業高等学校平成22年度入学式を挙行できますことに、心から感謝申し上げます。
 ただいま入学を許可しました全日制課程200名、多部制課程195名、合計395名の新入生の皆さん、入学おめでとう。本校への入学を心から歓迎します。保護者の皆様には心よりお喜びを申し上げます。
 飾磨工業高校の今回の入学試験の志願者倍率は、全日制、多部制ともに、県下でも非常に高いものでした。その難関を突破した新入生とその保護者の皆様の、合格者発表の日に喜んでいらっしゃる姿は、私たち職員の脳裏に焼き付いています。しかしその反面、うつむいて静かに帰っていった受験生と保護者の姿を思い浮かべる時、合格を勝ち取った皆さんには、不合格になった人の分まで本校でしっかりと学んでほしいと、強く思います。
「自分探し」という言葉があります。「自分探し」という言葉は、自分の中に確かな自分が存在するという前提の上に成り立つ言葉です。「確かな自分は存在する。しかしそれは非常に見つけにくいものである。」と考えておきます。
卒業後の進路を決める時に、「自分を探し当ててからでないと就職しない。あるいは就職する自信がない。」と考えるとすると、自分の仕事を見つけるのはいつになるのでしょうか。ニートとかフリーターの増加が社会問題になっている理由の一つが「自分探し」という言葉への誤解にあると考えています。
わたしは、「自分というものは、自分が行動を起こした時に初めて、表面に現れ、私たちが認識できるものである」と考えています。逆に言えば、「行動を起こさない場合には、確かな自分を探し当てることはできない」ということになるのです。
ですから、新入生の皆さんには、飾磨工業高校の学校生活の中で、自分から行動を起こしてほしいと言いたいのです。皆さんのその行動の中にこそ、確かな自分が存在するのです。行動を起こす前に、どちらがいい選択なのだろうかと悩むのではなく、その時に一番いい選択をしておいて、自分の行動の中で、自分のその選択を自分にとって正しいものにする努力をすることで、自分探しができるのだと言いたいのです。
さて、本校は工業高校です。現在、日本もまだ不況の中にいますが、私たちの日本を元気にするには、ものづくりの現場を元気にする必要があります。工業高校である飾磨工業高校の存在意義はここにあります。日本人の長所である忍耐強さ、協調性、誠実さ、親切さ、器用さ、こだわる性癖を大事にしていくことが、日本を元気にすることになると思います。私たちは皆さんにこれらのことを学んでほしいのです。
ところで、日本には、技術力やシェアで世界最高レベルにある、小さいけれども世界一の企業がかなり多くあることを知っているでしょうか。実はそれらはほとんどが中小企業なのです。サッカーワールドカップ大会で、審判が使用する笛は日本製です。それは80年近い伝統の技の産物だと聞きます。スペースシャトルの重要な部分を溶接しているのは、東京の小さな溶接会社です。スペースシャトルの燃料タンクを軽量化したのは、福井県にある中小企業である工作機械メーカーです。世界の工作機械の3分の1は、日本製です。世界の産業用ロボットの7割が日本製です。世界の金型のシェア世界一は日本です。歯車製造で世界一の技術を誇るメーカーは日本に多くあります。その歯車の精度を測定する機器の製造で世界のシェアの3割強を占める精密機械メーカーは日本にあります。その他、精度1000分の1ミリという常識破りのネジを製造している中小企業は東大阪市にあります。レジャー用魚群探知機で世界的メーカーになった中小企業。小型ベアリングで世界的最高水準の技術を持つ中小企業等々。あげれば切りがありません。
日本のものづくりを世界一にしている要因は3つあります。第一に精度と美しさに粘り強くこだわること、第二に規律を守りチームワークよくものをつくること、第三にお客様の要求、苦情に対して親切に誠実に対応することです。日本のものづくりを担うであろう皆さんは、この3つの能力を、授業、学校行事、部活動、地域貢献活動等の、本校のあらゆる教育活動の中で学んでもらわなければなりません。
皆さんには、夢を描いてほしい。そしてその夢を実現するために、具体的な目標を立ててほしい。大きな目標は、小さな目標に分割して、実行に移して、一つ一つ実現していってほしい。未来は望むだけでは自分のものにはならない。目標は、実行に移さなければ目標ではない。夢のままに過ぎないのです。
 最後になりましたが、御来賓の皆様には、御多用にも関わりませず、御臨席賜り、入学式に華を添えていただきましたことに、心よりお礼を申し上げまして、式辞といたします。  

  平成22年4月8日   兵庫県立飾磨工業高等学校長   田中 哲也